【選択的シングルマザーとは?】「未婚の母」の道を選ぶ女性、その背景と必要条件

自らの意志で未婚のまま出産し、母になる道を選ぶ「選択的シングルマザー」。

様々な家族の形がありますが、近年、認知度が上がり注目されている生き方の1つです。

本記事では、そんな選択的シングルマザーになるために必要なことやメリット/デメリット、考えておくべきことなどをご紹介します。

▶この記事のポイント

妊娠前から計画的にシングルマザーになることを選択して未婚で出産した女性のことです。
この言葉は、アメリカの心理療法士ジェーン・マテスが1981年に提唱したもので、その後ジェーン・マテスは「Single Mother by Choice(選択によるシングルマザー)」という組織を発足しています。
ジェーン・マテスが定義する選択的シングルマザーは「自分の意志でシングルマザーになることを決意した人」という意味であり、未婚状態のカップルや事実婚の夫婦などはそれに該当しないとしています。

近年、芸能界等著名人の間でも選択的シングルマザーとして子供を出産することを公表している女性がでてきていることもあり、徐々に日本でも認知度が広まり、選択的シングルマザーが増えてきています。

厚生労働省による「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果」によると、死別や離婚ではない、母子世帯における未婚のシングルマザー(母子家庭)の割合は、1993年から2021年までに4.7%から10.8%と、2倍以上も増加しています。

未婚のシングルマザー(母子家庭)の全てが選択的シングルマザーに該当するとはいえないでしょうが、推移の増加傾向より選択的シングルマザーが増えてきていることは推測できます。
これには、女性の社会進出に伴う経済的な自立によって、結婚・夫婦というかたちにはこだわらなくなってきた背景等が伺えます。

選択的シングルマザーを選ぶ理由には、以下のようなものが考えられます。

結婚をすると「自由な時間がなくなる」や「自由にお金を使えなくなる」、「そもそも他人と一緒に暮らすことに抵抗がある」等の理由により結婚願望がない女性で、でも、出産には適齢期があるし、自分の子どもは欲しいというパターン。

一度結婚を経験しているが故、結婚への理想などはなく、むしろもう結婚はしなくてよいと思っているが、出産・育児は経験をしたいという女性。

過去に男性不信の原因となるような経験をしてトラウマを抱えているために、恋愛や結婚に踏み出す事が難しいが、自分の子どもは欲しいというケース。

昨今様々な理由から増えている選択的シングルマザーですが、選択的シングルマザーになるメリットとしては具体的にどのような事があげられるのでしょうか。

キャリアを積みたいや独立を成功させたい等、明確なライフキャリアプランがあり、経済的には自立をしている女性などにとっては、恋愛や結婚のパートナー探しに時間を割く事自体がもったいないという方もいるでしょう。
しかし、出産には適齢期とリミットがあるため、自分のタイミングで出産をしたい、そういった女性にとっては、選択的シングルマザーという道が理にかなうこともあります。

様々な事情により名字をかえたくない場合にかえる必要がありません。
結婚をしないわけですから離婚をする心配もなく書類上の手続きや結婚、離婚に伴う精神的な負担も最小限に抑えられるのがメリットとなります。
自分の名字で妊娠・出産し、子どもも自分の名字と一緒にすることができます。

アセクシャル(他者に対して性的欲求・恋愛感情を抱かないセクシャリティ)の方や、恋愛・結婚・性的接触に抵抗のある方の選択肢の1つにもなるのがメリットです。
男性と関わりを持てないセクシャリティでも、子どもは欲しいと思う方もいらっしゃるでしょう。そのような方でも、体外受精などの方法で選択的シングルマザーになれます。

選択的シングルマザーになることにはメリットだけではなくデメリットもあります。
子供を出産するかどうかの判断は重要で、それ相応の覚悟が必要です。子供を出産してから後悔しないよう、デメリットもしっかり把握してから選択的シングルマザーを選ぶかどうか決めましょう。

病気や怪我、リストラなど何らかの事情で働けなくなり収入源を失った場合でも、基本子どもは自分が世話をしなければならないため、金銭的なことを常に考慮せねばならず、精神的にも肉体的にも不安定さを伴います。

配偶者がいないので、仕事・家事育児を全て1人で担う必要があります。
どんなに疲労がたまっていても子どもの世話はせねばならないため、両立させるのに苦慮することもあるでしょう。
子どもの平日の学校行事等もしばしばあり、配偶者と交代で休む事などができないため、その度に子どもを優先するか仕事を優先するかの葛藤に悩むこととなります。

もし現職では、キャリアと育児の両立が難しい…と感じるならば、転職を検討するのも1つの手です。
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多様性が少しずつ浸透しつつある日本においても、まだまだ選択的シングルマザーというのは少数派であることは確かです。
よって、周囲からの理解を得るのが難しく心ない言葉を言われたり聞かれたりすることがあるかもしれません。
また、子ども間においても、知らないが故に傷つく言葉を浴びせられてしまう場合も考えられます。

選択的シングルマザーのメリット・デメリットを熟知した上で、選択的シングルマザーを選んだ際に必要なこととしては、主に以下の3つがあげられます。

男性に子育ての資金援助や養育費の請求を前提としないのが選択的シングルマザーであるため、基本的に自分の収入だけで子育てをしなければならず、経済的に自立をしている必要があります。
シッターや家事代行サービスを利用するのにもお金はかかります。
収入の多い会社で働く他、日頃から貯蓄をしておく必要があるでしょう。

選択的シングルマザーを選んで生むからには、周囲からの偏見等にも動じない強い心で、我が子と2人で幸せに暮らすのだという覚悟をもって、精神的に自立していることが大切です。
母親の後々の精神的な揺らぎに子どもが左右され、親子共に不幸な生活とならないようにしましょう。

長期的な視点をもって、自分の身に万が一の事があっても子どもの安全面や健康面、生活の保障面が脅かされないように、リスクヘッジを図り備えるようにしておきましょう。
日頃から親族や友人とコミュニケーションをとり、万が一の際には頼みやすい環境づくりをしておくのもよいかと思います。

未婚の女性が精子提供を受けるための法的整備がなされていない日本において、選択的シングルマザーになるための選択肢をご紹介します。

交際相手と結婚をしないのを条件に妊活だけを行います。
つまり、あくまでも妊娠・出産を目的とした付き合いです。
相手が結婚をしたい、子どもを一緒に育てたいという考えの場合には相互の意見が合わないため、成り立ちません。
お互いの意向を事前にしっかりと合致させておかないとトラブルの原因となりますので、十分に話し合っておく必要があるでしょう。

日本では原則、精子提供を受けられるのは妊娠が難しい婚姻済みの夫婦に限られているのが現状です。
しかし、海外の精子バンクであれば、婚姻していない女性でも精子の提供が受けられます。そういった意味では、海外の精子バンクを利用するのは選択的シングルマザーに良い方法かもしれません。

しかし、海外の精子は凍結されて輸入されるため、解凍後運動率が下がります。
そのため妊娠する確率が下がる可能性があったり、衛生面の不安、高額な費用がかかる事も十分な配慮を要します。

公的医療機関を介さずに精子提供を行っている個人、団体があります。
SNS上で個人間で精子提供を行っているアカウントなども存在します。
ですが、精子を提供する側の病歴や性感染症の有無が確認できなかったり、性行為を迫られた、事前に聞いていた情報と実際のドナーが違った等、トラブルも少なくありません。国内で有志による精子提供を受けることは、リスクも伴う事を認識しておいた方がよいでしょう。

選択的シングルマザーになる際の注意点についても事前に心得ておきましょう。

自分の子どもの「出自を知る権利」を侵害しないように配慮が必要です。
「出自を知る」とは、自分の父親が誰なのかを知ることです。
成長とともに子どもが「自分の父親は誰で、どこにいるのか?」と知りたがるのは、ごく自然なこととしてあり得るでしょう。

国連による「子どもの権利条約第7条」には、「児童はできる限りその父母を知り、且つその父母によって養育される権利を有する」とあります。
ですが、日本の法律においてはまだ「出自を知る権利」は整備されていないのが現状です。
そのような中において、どのように子どもの「出自を知る権利」を守り対応するのかを、考えておく必要があるでしょう。

交際相手との子どもの場合などにおいては、父親の「認知」問題に関しても相手としっかり事前に話し合っておく必要があります。
自分としては認知を求めず妊娠したつもりでも、相手の方から後々「認知をしたい」と言われた場合にはどうするのか等を予め検討しておいた方がよいでしょう。
また、別の観点から、もしも相手より養育費や援助が欲しいとなったら、父親の認知が必要不可欠となってきます。
先々どうなるか分からないからこそ、万が一の際に話し合いのできる関係性を保つようにしておきましょう。

厚生労働省が発表した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html)によると、児童がいる世帯(991万7千世帯)に占めるひとり親と未婚の子のみの世帯(62万9千世帯)の割合は、約6.3%と少数です。
多様性を認め合う社会に向かいつつある日本ですが、個々が自分と異なる価値観を理解したり受け入れるのにはすんなりといかないこともあるでしょう。
よって、友人や両親、親戚等、周囲からの目線や偏見にも覚悟を要するかもしれません。
ポジティブではない意見にも立ち向かえる強い心を持ちましょう。

最後に、選択的シングルマザーを含むシングルマザー(母子家庭)が使用できる可能性のある公共機関の手当や支援制度などについてご紹介します。

公的支援制度

  • 児童扶養手当
  • 児童育成手当
  • 住宅手当
  • 特別児童扶養手当
  • 障害児福祉手当
  • 医療費助成制度

▼公的手当

  • ひとり親控除
  • 交通機関の割引制度
  • 上下水道の減免制度
  • 粗大ごみなどの収集手数料の免除
  • 保育料の免除や減額制度

▼収入の少ない世帯が受けられる公的支援制度

  • 児童手当
  • 就学援助制度
  • 高等学校等就学支援金制度
  • 国民年金の免除・軽減

以上のように、シングルマザー(母子家庭)が該当する制度や手当は色々と存在します。
ですが、自治体や各世帯の状況により、全世帯が一様に使用できるわけではありませんので、申請する際には、お住まいの地域の市区町村へ確認する事を推奨致します。

様々な領域において多様性を尊重していこうという社会において、「選択的シングルマザー」もまた現代の多様性ファミリーの一つの選択肢となってきていることが分かりました。
ですが、生まれてくる子どもを考えた時に、まだまだ倫理的観点からの不安や法律が整っていないことによるリスクなども懸念点としてあります。
自立した一人の女性としての母親本人による責任と覚悟はもとより、ニューノーマルな生き方を、誰もが取り残されない新たな概念として捉え、皆が生きやすい社会の創造を、社会全体の問題として捉え整備すべき時なのかもしれません。

*こちらの記事は、ライターを務めております『withwork Magazine(X Talent株式会社)』(https://media.withwork.com/article/164)でも、より詳しく解説しております。よろしければ、そちらもご参照下さい。

選択的シングルマザーとは?「未婚の母」の道を選ぶ女性、その背景と必要条件 - withwork Magazine

自らの意志で未婚のまま出産し、母になる道を選ぶ「選択的シングルマザー」。様々な家族の形がありますが、近年、認知

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