【卵子凍結とは?】目的、メリット/デメリット、費用・補助金
近年、女性の社会進出に伴い、キャリア形成や将来の計画に合わせて卵子凍結を検討する女性や、福利厚生制度として卵子凍結補助を導入する企業が増えてきました。
卵子凍結は将来の選択肢を増やす一方で、検討される方はあらかじめリスクも知っておく必要があります。
本記事では、卵子凍結の概要や流れ、メリット/デメリット、かかる費用・補助金などについてご紹介します。
▶この記事のポイント
- 卵子凍結とは
- 受精卵凍結(胚凍結)との違い
- 卵子凍結が行われる理由
- 近年、卵子凍結を選択する人が増えている理由
- 卵子凍結のメリット
- 卵子凍結のデメリット
- 卵子凍結における妊娠率
- 卵子凍結の方法
- 卵子凍結にかかる費用・補助金
- まとめ
卵子凍結とは
「卵子凍結」とは、卵巣から採取した卵子を将来の妊娠に備えて凍結保存することを言います。
ここでの卵子は、まだ精子と受精する前の段階の未受精卵を指します。
受精卵凍結(胚凍結)との違い
「卵子凍結」は卵巣から採取した卵子の中から状態の良いものを選んで凍結保存する医療技術ですが、「受精卵凍結(胚凍結)」の場合は、採卵後に精子と受精させて数日培養し、良好に細胞分裂した胚を選んで凍結保存します。
対象者の違い
卵子凍結はまだパートナーが決まっていない未婚の方が行うことが多い一方で、受精卵凍結は夫婦や事実婚カップルが生殖補助医療、いわゆる不妊治療の際に行います。
妊娠率の違い
不妊治療の際に、未受精卵ではなく受精卵の状態で凍結するのは、卵子のままで凍結するよりも着床率・妊娠率が高いことが理由としてあります。
費用の違い
卵子凍結の場合は、保険適用にならないため、病院によって料金が異なります。
一方で、受精卵凍結の場合は、43歳未満の女性が不妊治療で行う場合、2022年4月より保険適用となっています(※詳しくは、こちら(https://www.mhlw.go.jp/content/000901931.pdf)。
卵子凍結が行われる理由
卵子凍結は行われる状況によって、大きく2パターンあります。
「医学的適応」による卵子凍結
「医学的適応」とは、医学的に卵子凍結の必要性があると判断される場合に該当します。
つまり、病気の治療や病気そのものにより妊娠しにくくなることが懸念される場合に、治療に先立って行う卵子凍結を意味します。
卵子凍結は元々、このような方々へ出産の可能性を残すための技術でした。
例えば、悪性腫瘍などの治療によって生殖機能が低下し、妊孕性(妊娠するための力)が失われると予測される場合です。
悪性腫瘍の治療は卵巣の働きに影響を与える恐れがあるため、治療を開始する前の卵子を凍結保存することにより、妊孕性を温存します。
悪性腫瘍が完治して妊娠を望む際に、凍結保存しておいた卵子を融解し、顕微授精を施して受精卵(胚)を作り、胚移植することにより妊娠が可能となります。
「社会的適応」による卵子凍結
一方、「社会的適応」の卵子凍結は、健康な女性が将来の妊娠に備え妊孕性が高いうちに卵子を凍結しておく場合を指します。
女性の社会進出により、妊娠・出産しやすい時期(20~30歳代)の女性が社会で活躍していく反面、妊娠・出産期が高齢化しています。
加齢とともに卵巣機能は低下してしまうため、妊孕性が高いうちに卵子を凍結しておくことで、加齢による妊孕性の低下を回避し、高齢でも妊娠できる可能性が増すのです。
このような時代の流れにより、「社会的適応」による卵子凍結も注目を浴びるようになってきました。
近年、卵子凍結を選択する人が増えている理由
もともとは医学的適応の為の技術としてはじまった卵子凍結ですが、昨今では女性の社会進出・晩婚化の時代背景と共に、社会的適応による卵子凍結を選択する人が増えてきました 。
芸能人が体験談を語ったり、卵子凍結に関するセミナーを定期的に開催しているクリニック等があったり、卵子凍結に関する情報が入りやすくなって卵子凍結自体の認知度が上がったことも理由のひとつになっているでしょう。
卵子凍結の対象者は?
<医学的適応>
上述したように、主に悪性腫瘍などの治療で卵巣機能の低下が予想される方が対象です。
乳癌や白血病、境界型卵巣腫瘍などで抗がん剤や放射線治療が必要になる方などが、治療開始前に卵子凍結をすることがあります。
実施には、主治医からの文書による適切な情報提供ならびに許可を要し、対象者が成人の場合は本人の同意に基づき、また未成年者の場合には本人および親権者の同意に基づき可能となります。
<社会的適応>
年齢が上昇することによって卵子の質は下がり、妊娠の可能性は低下していきます。
今のところ妊娠の予定はないけれど、将来に備えて卵子を保存したいと考える方が対象です。
卵子凍結の対象者は成人した女性で、未受精卵子等の採取時の年齢は、36歳未満が望ましいとされています。
採卵時の年齢
初めて採卵を行った(卵子凍結を行った)年齢は、医学的適応においては35~39歳が一番多く30.6%を占め、続いて30~34歳 が25.1%、25~29歳 が15.8%となっています。
一方、社会的適応においては、35~39歳 が45.4%と1番多いのは同じですが、 2番目に多いのが40~44歳で20.1%を占め、続いて30~34歳が13.9%となっています。
このように、社会的適応の方が医学的適応よりも採卵時の年齢が高く、30代後半から40代前半で6割以上を占めています。
卵子凍結のメリット
卵子凍結を行うことのメリットとしては、以下のことがあげられます。
卵子の老化を止められる
卵子は生まれる前の胎児期に作られ、それ以降、新しく作られることはありません。
胎児期に作られた卵子は出生時には1/5ほどに減っており、時間の経過と共に減り続けます。
さらに量だけでなく、加齢により卵子の質にも変化があります。妊孕性の高い卵子を凍結することで、年齢による変化に備えることができます。
将来、妊娠に影響する病気に備えられる可能性がある
年齢が上がるにつれ、子宮や卵巣の病気のリスクが高まります。
健康なうちに卵子を凍結しておくことで、将来的な妊娠に備えておくことができます。
精神的な安定につながる
妊娠する方法の選択肢が広がることで、精神的な安定につながり、キャリア形成やパートナー探しなどに集中できることをメリットに感じる方もいらっしゃいます。
卵子凍結のデメリット
一方、卵子凍結にはデメリットもあります。
将来の妊娠・出産を約束するものではない
卵子凍結をしても妊娠できない可能性があります。
原因としては、卵子の質やパートナーの精子の質などが考えられますが、詳しい事はまだ明らかになっていないのが現状です。
このように、卵子凍結は将来の妊娠の可能性を高めるための方法の一つであって、必ず妊娠できるわけではないことを理解しておく必要があります。
母子共にリスクが高まる
卵子凍結は卵子側の時間を止めることはできますが、母体自体の老化は止めることができません。
40歳以上になってくると卵子の質が低下し、さらに子宮がんや子宮筋腫など妊娠のしやすさに影響を与える病気にもかかりやすくなります。
そのため、卵子凍結による出産率の低下や出産に伴うリスクが高くなります。
高齢出産は母体だけでなく、赤ちゃんにも負担がかかり、低体重出生児として産まれるリスクもあります。
母子共にリスクが高まることを念頭におき、担当の病院と不安要素についてよく相談をしましょう。
金銭面の負担が大きい
卵子凍結は保険適応外で自費となる為、検査費用・採卵費用・初回凍結費用をあわせおよそ25~75万円の費用が必要となります。
排卵誘発剤や麻酔の使用有無によっても、必要となる費用は異なります。
また、保存期間を更新する場合には、さらに5~10万円程度の費用が必要です。
これらの費用はあくまで目安であり、病院やクリニックによって異なりますが、いずれにしても金銭的な負担が大きいのは事実です。
卵子凍結を受ける前に、検討している病院やクリニックでしっかりと必要な費用を確認するようにしましょう。
卵子凍結における妊娠率
卵子凍結をした際の妊娠率についてみてみましょう。
卵子の融解後の生存率は90~97%、受精率71~79%、着床率17~40%、胚移植あたりの妊娠率36~55%、融解卵子1個あたりの妊娠率は4.5~12%。
このように、1個の卵子が受精・着床して妊娠に至る確率は低めであるため、可能ならばより多くの卵子を凍結保存しておくことを勧められるのが一般的です。
卵子凍結の方法
【卵子凍結の流れ】
1.診察・検査 → 2.採卵誘発 → 3.採卵 → 4.卵子凍結・保管
- 診察・検査
採卵前には、血液検査や超音波検査などを行います。また、ホルモン値や卵巣機能、卵子の数(AMH値)なども調べます。 - 採卵誘発
質の良い卵子を複数採取するため、注射や内服薬など様々な方法によって、排卵誘発剤を使用し、多くの卵子を成熟させます。年齢、卵巣機能、体への負担なども考慮して、その人に合った方法によって行われます。 - 採卵
腟に超音波機器をいれて超音波画像を見ながら、卵巣のなかの卵胞に針をさし、卵胞液とともに卵子を吸引・採取します。 - 卵子凍結・保管
耐凍剤濃度の高い溶液に卵子をひたし、マイナス196℃の超低温で凍結し、液体窒素タンクに保管します。何十年も状態変化なく保存させることができます。
【採卵までの通院スケジュール】
1回の採卵に必要な通院回数は、約4~5回です。
(▼モデルケース)
回数 | 通院時期 | 内容 |
初回 | 月経3日目以内 | 採血と超音波で卵巣の状態を確認し、卵胞の刺激方法を選択 |
2回目 | 月経7~9日目頃 | 採血と超音波で卵胞の発育具合を確認して、薬剤の量を調整 |
3回目 | 月経10~12日目頃 | 採血と超音波で卵胞の発育具合を確認して、採卵日を決定 |
4回目 | 月経12日目頃 | 採卵 |
卵子凍結にかかる費用・補助金
卵子凍結は上述した通り、基本的に保険適応外で自費となる為、およそ25~75万円の費用が必要となります。
ここでは参考として、東京都の取組みをご紹介します(※2024年7月時点)。
東京都では、将来の妊娠に備える選択肢の一つとして、「卵子凍結・保存費用」及び「凍結卵子を使用し、卵子融解・授精・胚培養・胚凍結・胚移植・妊娠確認をする費用」を補助する助成制度を設けています。
卵子凍結に係る費用の助成額は合計で30万円(最大)、凍結卵子を使用した生殖補助医療の助成額は、凍結卵子を融解し受精を行った場合に1回につき上限25万円(最大6回まで)支払われます。
東京都に住む18歳から39歳までの女性※が対象です(※採卵を実施した日における年齢)。
すでに不妊症の診断を受けており、不妊治療を目的とした採卵・卵子凍結を行う方は対象外となるなど、細かく対象となるか否かの条件面が定められていますので、申請方法等も併せて、詳細は東京都福祉局HP (https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/touketsu/gaiyou.html)をご参照下さい。
まとめ
将来の妊娠の可能性を拡げる選択肢の一つとして「卵子凍結」や「受精卵凍結」という方法があることが分かりました。
しかし、凍結をしたから「それで安心」、「それで終わり」といったものではなく、あくまで「そこからスタートするもの」という認識を持って、メリットとデメリットを勘案した上で実施するか否かを決断しましょう。
ご自身の身体面、金銭面、キャリア、ライフはもちろんのこと、誕生する可能性のあるお子さんの将来も含めて事前にシミュレーションを行い、「卵子凍結」「受精卵凍結」いう選択をしたことによって、より豊かで幸福感のある未来が描けるとよいですね。
*こちらの記事は、ライターを務めております『withwork Magazine(X Talent株式会社)』(https://media.withwork.com/article/1157)でも、解説しております。
よろしければ、そちらもご参照下さい。
Kimoti 〜Quality of Life Counseling〜
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