【マミートラック】出世や昇進に影響!?問題点と抜け出し方、企業の対策
育休明けの女性からのご相談。
「復職後、昇進や昇給の機会が遠のいてしまった…」
「もっとバリバリ働きたいのに、サポート的な業務を任されるようになった」
企業がよかれと思って仕事と育児の両立がしやすいように取り計らっても、女性従業員からはネガティブに受け取られることも。
本記事では、そんな「マミートラック」の問題点や、企業や個人でできる予防策・対応策についてご紹介します。
▶この記事のポイント
- マミートラックとは
- 日本におけるマミートラックの歴史
- マミートラックのメリット
- マミートラックのデメリット
- 企業側からみたマミートラックの問題点
- マミートラックの予防策
- マミートラックへの対処法
- 企業が取り組むべき、マミートラックへの防止策
- まとめ
マミートラックとは
マミートラックとは、女性従業員が育休から復職した際に、本人の意思に反した形で、比較的責任が軽い業務へと担当業務を変更されたり、元々所属していた部署から異動を命じられたり、出世コースから外されたりと、その後のキャリア形成を阻害されることを指します。
昨今では、当事者などから「マミートラックに陥ってしまった…」などと表現されたりと、ネガティブな意味合いで捉えられることが多い言葉ですが、元々はポジティブな意味合いで生まれた概念で、1980年代のアメリカで子育てとキャリアの両立を望む女性のために、育児休暇等の制度を整備し柔軟に働けるように提言されたのがきっかけです。
もちろん、女性従業員自身がそうした業務内容や働き方の変更を望む場合は問題ありません。
しかし、復職後のフォローを本人が望んでいない誤った形で行うと、女性従業員の働くモチベーションに大きく負の影響を与え、人材の離職につながったりと、企業にとってもネガティブに働きます。
日本におけるマミートラックの歴史
日本において、正社員で働くワーキングマザーが増えたのは2010年頃。
その背景としては、2009年に改正された育児・介護休業法によって、企業に育児短時間勤務制度(※)が義務化されたことが大きく影響しています。
(※)一部の適用除外者を除き、3歳までの子を養育する労働者が、1日の所定労働時間を原則6時間とすることができる制度
この制度の導入により、正社員のまま職場復帰がしやすくなりました。
制度を積極的に活用してワーキングマザーとしての権利をきちんと活用していこうという流れから、柔軟な環境下で働けるようにという意識が世間的に高まってきました。
しかし一方で、柔軟な環境の捉え方の違いによって、「もっと働きたいのだが、業務が整理され楽な仕事を提供されている」や「働きやすくはあるが、自分のキャリアアップは遠のいた」、そのような周囲とワーキングマザー本人との認識のズレが生じるようになり、徐々にネガティブな言葉として変換されていったという歴史があります。
マミートラックのメリット
では、実際のメリットとしてはどのようなものがあるのでしょうか。
育児と仕事の両立がしやすくなる
代替要員のいる部署に所属することで、残業なく決まった時間にあがりやすかったり、子どもの急な発熱時などでもお休みがとりやすかったりと、お子さんと向き合える時間がきちんととれ、育児との両立がしやすくなります。
職場の他のメンバーに負担をかけない
保育園からの突然のお迎え要請にも対応できるよう、社外との打ち合わせがなかったり、クライアントの都合に合わせる必要のない社内的な補佐業務がメインとなっている等、突発的に欠員となっても他のメンバーに業務の大きな負荷をかけることがなく済みます。
仕事のプレッシャーが減る
管理的ポジションで収益や部下をみる責任が問われたり、大きなプロジェクトを抱えていたり、一人で完結させなければならない成果物を期待されていると、限られた時間の中では時として大きなプレッシャーとなる場合もありますが、マミートラックにのることでそういったプレッシャーが軽減されます。
マミートラックのデメリット
一方で、デメリットとしては、具体的にどのような事があるのでしょうか。
自分の責任/裁量による仕事ができなくなる
他のメンバーがフォローしやすい仕事量と質に絞られた範囲での稼働となる為、自分の裁量で判断,決定して業務を処理するような責任ある仕事ができなくなる可能性があります。
仕事にやりがいが持てなくなる
ルーティンワークがメインとなる等、自分の本来やりたかった業務やチャレンジしてみたい新しい業務がなかなか任せてもらえず、キャリアアップをはかれている実感がもてない為、仕事にやりがいを感じられなくなっていく傾向があります。
給与が下がる
短時間勤務を選択した場合、給与が下がります。基本給が短縮時間分減る他、固定残業代がなくなったり、賞与も減ったりすることがあります。
限られた時間でも成果を出すべく懸命に働いているのに、給与が減ったり評価されにくい事で、自己肯定感が下がってしまうケースもあります。
企業側からみたマミートラックの問題点
マミートラックの問題点を企業側の観点からも見てみましょう。
社員のモチベーションが低下する
上昇志向が強く育休前との業務や待遇に差が大きければ大きい程、仕事への情熱ややりがいが減少しモチベーション低下をもたらします。
また、周囲の社員においても、追加要員を配置することなく自分達で業務のカバーをしている人材不足な企業の場合には、自分の仕事ではない業務が増えるストレスから、モチベーション低下に繋がります。
戦力の喪失
本当はもっと活躍できるような人材が、最前線の現場から遠ざかってしまって本来の力が発揮できないでいるということは、企業としては貴重な人材というアセットを持っているにもかかわらず、その方の持っているポテンシャルを発揮できていないということに繋がり、戦力の喪失が予測されます。
女性幹部の育成スケジュールが長期化する
2019年に改正された女性活躍推進法により、ある一定規模の企業には女性の活躍に関する情報を公表することが義務付けられました。このように、女性も能力が十分に発揮される環境が望ましいとされる昨今において、子どもがいることによって管理職の道が遠のく等、重要な人材の育成が長期化することは、企業としても頭を悩ます結果となります。
離職率の増加や採用率の低下につながる
子育てを望む女性社員が、育児と両立する会社としては相応しくないのではと不安になり離職をしてしまう可能性があります。
また、育休取得率や女性管理職の割合等を鑑み、この会社は子育てをしながらキャリアアップしていくのは厳しいだろうと判断し、採用率の低下につながることも考えられます。
マミートラックの予防策
では、本人としてはどのような予防をすればよいのでしょうか。
産休・育休後の働き方について事前に相談する
最も大切な事としては、家庭内で産休・育休後の働き方について、産前のうちからよく話し合い、家事・育児の分担におけるパートナーとの共通認識をもっておく事です。
その上で、復帰後の働き方について、企業内においても具体的なイメージを上長や人事部とよく相談し、はやめに共有、理解を得ておくと安心でしょう。
復帰後の不安要素は事前に対策する
保育園以外の子どもの預け先の確保(祖父母、ファミリーサポート、ベビーシッター、病児保育等)をしておいたり、時短家電の購入や食品宅配サービスの検討をするなど、過度な負担とならずに仕事と家庭の両立がバランス良くいくよう、事前に対策をしておくとよいでしょう。
マミートラックへの対処法
続いて、具体的な対処法についても考えてみましょう。
パフォーマンスを向上させる
限られた時間でも成果を上げる為には、パフォーマンスを向上させる必要があります。
日頃から体調管理に気をつけたり、スケジュール管理を怠らないこと、また、PCスキルを磨く、コミュニケーション能力を高める、いざという時に頼れる社内の方との関係性を構築しておくなど、ご自身にとってプラスとなるようなパフォーマンス向上に努めるとよいでしょう。
子育てと両立しやすい企業に転職する
成果を上げても、どんなに会社側に訴えても、どうにもならない場合には、別の企業に思い切って転職するのも一つの対処法です。
子育てとの両立支援に積極的に取り組んでいる企業も増えてきましたし、転職活動が不安という方には、たとえば、ワーキングペアレンツの転職支援に特化しているwithwork(https://withwork.com/?utm_source=magazine&utm_medium=column&utm_campaign=text_65)のように、キャリアも家庭も大事にしたい方に寄り添った人材紹介会社もありますので、相談してみるとよいでしょう。
企業が取り組むべき、マミートラックへの防止策
企業にとっても影響の大きなマミートラック。最後に、企業が取り組むべき防止策をご紹介します。
復帰後のキャリアプランについて、定期的に摺合せをする
どのような働き方とキャリアプランを希望しているのかを丁寧に聞き取り、企業側と本人とで認識の摺合せをしておきましょう。
また、その希望に対し、社内で活用できる諸制度があれば説明をしておく必要もあります。
実際に出産し育児をすると、出産前のプランや意向とかわってくる可能性もある為、体調面のヒアリングや近況の報告もしつつ、複数回定期的に面談をし、それまでと希望がかわっていないか等、確認もできると望ましいでしょう。
評価制度を見直し、時間あたりの生産性を重視する
マミートラックがモチベーションを低下させる要因として、正当に評価してもらえない不満が大きいと言われています。
定量的な評価制度のもとでは、勤務時間に限りのある社員にとっては不利に働きます。
定性的な評価基準も設けて組み合わせることや、時間あたりの労働生産性も重視することで、効率性や無駄削減、付加価値といった観点から、正当に評価されやすくなります。
柔軟な働き方ができる制度を導入する
テレワークや時短勤務、フレックスタイム制等、勤務時間や働く環境を柔軟にする制度を導入しましょう。また、福利厚生としての補助金制度を活用し、ベビーシッター代とすることで、早期に復帰したい有望な社員の希望に応えている企業などもあります。
国の施策として両立支援助成金などもありますので、上手く活用しながら柔軟に働きやすい体制の整備をしましょう。
組織風土や意識を改革する
制度だけではなく、風土を整えることも両立には不可欠です。
例えば、女性リーダーが少ない職場や女性の離職率が高い職場は、そもそも女性が活躍しづらいような組織風土になっていないか、周囲の理解ができているか等、今一度見直してみましょう。
多様な価値観や働き方に関する研修をするなど、組織全体のこととして捉え改革していくことで、社員同士の理解も深まっていけるでしょう。
まとめ
もともとはポジティブな意味であったマミートラック。マミートラックにのることのメリットやデメリットをよく勘案し、自分の理想とするライフとキャリアに照らし合わせ、自分らしいキャリアを実現していけるとよいですね。
その為には、ご自身の努力だけではなく、自分を取り巻く家庭や企業との協働、周囲の理解も必要となってくるでしょう。
働き方の多様性が問われるまさに今が、社会全体でマミートラックと向き合うときなのかもしれません。
*こちらの記事は、ライターを務めております『withwork Magazine(X Talent株式会社)』(https://media.withwork.com/article/65)でも、より詳しく解説しております。よろしければ、そちらもご参照下さい。
Kimoti 〜Quality of Life Counseling〜
代表 木持 めぐみ
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