【法改正】男性育休が義務化!メリットと給付金、おすすめ取得タイミング

2022年4月の育児・介護休業法により、これまで以上に注目されている男性育休。
本記事では、具体的な法改正の内容と取得するメリット、給付金、実体験を元にしたオススメの取得タイミングなどについて紹介します。

▶この記事のポイント

配偶者の出産や育児を機に、男性が子育てを行うために取得する休業のこと。

育児・介護休業法で定められている制度であり、男性の積極的な育児参加を推奨する為に、国が主導となって育休の義務化を設けています。
男性も取得できる権利として明確化したことで、これまでにはない「仕事と子育ての両立支援制度」の一つとして期待されています。

子供の出生による労働者の休業制度には、「産休(産前産後休業制度)」と「育休(育児休業制度)」があります。
2つの違いをみてみましょう。

「産休」は、労働基準法により定められており、産前と産後の女性を対象としています。
出産予定日の6週間前から開始し、出産日翌日から8週間後までの期間となります。
母体保護を目的とするため、申出期限が定められておらず、分割取得や休業中の就労も認められていません。

一方、「育休」は、冒頭でもお伝えした通り、育児・介護休業法により定められており、対象者は母親と父親の両方となっています。
育児と仕事の両立支援が目的の為、男女ともに取得することが可能です。
男性は配偶者の出産日から子どもが1歳になる前日まで、女性は産後休業が終わった翌日から子どもが1歳の誕生日を迎える前日までのそれぞれ希望する期間となります。
また、保育所への入所申込みをしているが入所できない等、特別な事情がある場合には、最長2歳まで延長することが可能です。
勤め先によっては、子どもが満3歳になるまで育児休業を取得できるなど法律を上回る制度を定めているところもありますので、勤務先に確認してみるとよいでしょう。

申出期限は原則1ヵ月前までで、分割での取得も可能となっています。
ただし、休業中の就労は「産休」同様、不可となっています。
このように、「産休」と「育休」は、ともに出産や育児に伴う労働者を支援するためのものですが、根拠となる法律や対象者、申出期限等が異なります。

名前が似ているために混同されやすいですが、「育児休業(育休)」とは別に育児をするための「育児休暇(育児目的休暇)」という制度もあります。
「育児休暇」は改正育児・介護休業法(2017年10月1日施行)により創設された休暇ですが、この休暇制度を設けること自体は企業の努力義務とされています。
よって、規定に定めのない企業もありますので、勤め先への確認が必要となるでしょう。
取得対象者は、小学校就学に達するまでの子を養育する労働者となっており、子どもの出産時や保育園の行事等の際に申請してとれる休暇となっています。
休暇中の給与に関しても、各企業の規定によって有給か無給かが定められていますので、こちらも併せて確認しておくとよいでしょう。

育休を希望する場合には前述した通り、育休開始予定日の1ヵ月前予定日より早く子どもが生まれた等特別な理由があるときは、1週間前まででOK)までに勤め先に申し出る必要があります。
女性の場合、育休開始予定の1ヵ月前というと、産休中がほとんどです。産後のまだ身体が安定しない時期に手続き書類を準備するのは慌ただしく大変なので、極力出産前に手配を済ませておくと安心でしょう。
育休の申し出を受けた会社は、以下の必要書類を管轄のハローワークに提出する必要があります。

  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  • 育児休業給付受給資格確認票
  • 育児休業給付金支給申請書
  • 賃金台帳や出勤簿など
  • 母子手帳のコピー

これらの書類の提出をもって、従業員に受給資格があるかどうかの確認がされ、確認が取れるとハローワークから「育児休業給付金支給決定通知書」が交付され、勤務先を通じて渡されることとなります。
この手続きによって、従業員は育児休業給付金が受け取れます。

育休中は、産休中と同様に社会保険料の免除も行われます。
この期間は、被保険者、つまり従業員にとっては保険料を納めていたものとみなされますので、休業期間中も保険医療は受けられますし、将来の年金額にも影響しないように配慮されています。

育児休業等開始月から終了予定日の翌日の月の前月が免除期間となります(※産休については、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月まで)。
この制度の適用を受けるには、育休については「育児休業等取得者申出書」(産休については「産前産後休業取得者申出書」)という書類を年金事務所に提出しなければなりません。
この書類の提出をしないと、会社も従業員も保険料免除が受けられないので、必ず提出をするようにしましょう。

このように、育休に伴う申請書類は比較的多く、制度も変更となる場合もありますので、適宜社内の労務や人事担当の方と細かく確認し合いながら、手続きをすすめていくとよいでしょう。

働く男性の育休取得率は、2022年度に約17%と過去最高になりました(厚生労働省令和4年度雇用均等基本調査)。
ただし、政府は男性の育休取得率の目標を2025年までに50%、2030年までには85%に引き上げる目標を立てており、そこに到達するのには、まだまだ大きな乖離がある結果となっています。

また、中小企業は大企業ほど人繰りに余裕がないため、長期間の育休は取得しづらいのが実情で、取得したとしても「取るだけ育休(短期間にとどまり、家事や育児に十分な時間をさけない)」にとどまってしまっていたり、「取らされ育休(期間や取得タイミングを従業員が主体的に決定できず、会社側の取得率向上のために取らされる)」であるなど、実態としてはなかなか希望する時期と期間で十分な育休がとれていないのが現状です。

さらには、厚生労働省が2023年3月に公表した調査(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001085268.pdf)では、男性の正社員が育休を取得しない理由を複数回答で聞いたところ、最も多かったのが「収入を減らしたくなかったから」で39.9%、「職場が育休を取得しづらい雰囲気だった」または「会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかったから」が22.5%と、収入面や職場環境理解面においても課題が浮き彫りとなっています。

厚生労働省の「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査 報告書」(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000775817.pdf)によると、過去5年間に勤務先で育児に関わる制度を利用しようとした男性従業員のうち、26.2%がパタハラ(=育休取得や時短勤務、看護休暇を希望したり、実際に取得する中で、ネガティブな言動をされること)を経験したと回答しています。
一方で、「4人に1人はパタハラを受けていない」ことになります。もし、将来も見据えて子育て世代に理解のある職場で働きたいという方は、転職を検討するのも1つの手です。たとえば、ワーキングペアレンツの転職支援に特化したwithwork(https://withwork.com/?utm_source=magazine&utm_medium=column&utm_campaign=text_82)では、IT/Web業界・東京23区にオフィスを構える企業を中心に、柔軟な働き方が可能な求人を厳選してご紹介しています。よろしければ、withworkにご相談してみてください。

様々な課題を受けて男性が育休を取得しやすくするために、2021年6月改正の育児・介護休業法が2022年4月から段階的に施行されています。
具体的には以下です。

上司や同僚などに気兼ねなく希望通りに育休を取得するには、職場の理解や後押しをしてくれるような雰囲気づくりが欠かせません。
そのために、育休に理解を示してもらう為の研修の実施や相談窓口設置による相談体制の整備等、取得しやすい雇用環境整備を義務化しました。

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育休の制度について個別に周知し、育休を取得するかどうか本人の意向を聞くことが義務化されました。

周知内容としては、育休制度の詳細な説明や、申し出先情報、育児休業給付や社会保険料の取り扱い等に関する事項です。
周知方法も、口頭ではなく、面談や書面等で行う必要があります。
取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められていません。
相談や報告があった際には、希望する日から育休を取得できるよう、スケジュールに余裕をもった個別案内をしましょう。

育休の場合、改正前は「(1)引き続き雇用された期間が1年以上、(2)1歳6ヵ月までの間に契約が満了することが明らかでない」となっていました。
これが、(1)の要件を撤廃、つまり、入社から1年未満の方であっても育休の取得が可能となりました。
万が一何らかの事情等により、「引き続き雇用された期間が1年未満の従業員」を対象外とするには、労使協定を締結する必要があります。

一方で、要件(2)は、引き続き取得要件となっていますが、「契約満了することが明らかでない」の判断のポイントは、事業主が更新しないことを明示している時のみですので注意が必要です。
無期雇用労働者と同様の取り扱い(育児休業給付についても同様に緩和)になっているか等、自社の就業規則等を今一度見直してみましょう。

このような法改正を受けて、企業が従業員の育休取得を促すような取組みが義務化されることで、男女ともに周囲に遠慮したり躊躇することなく、育休を取得したい時にしたい期間だけ取得し、仕事と育児等の両立ができる職場環境になることが期待されます。

男性育休を取得した際の、取得者側と企業側の両面からもう少し詳しくメリットをみてみましょう。

  • 産後のパートナーの心身のケアができ、産後うつや育児ノイローゼの軽減につながります。
  • 生まれて間もない時期から子どもと接する時間を多めに設けることで、父親としての実感や自覚を持ちやすくなります。
  • パートナーと分担して家事・育児を協力することで負担が軽減され、夫婦で子どものいる生活を楽しみ充実させることができます。
  • パートナーと交代で育休を取得するなどによって、パートナーのキャリアも保つことができ、お互いのワーク・ライフ・バランスが整いやすくなります。
  • 男性労働者の育休取得に貢献した中小企業には「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」が支給されます。但し、2022年度から制度内容が変更となっていたり、いくつか支給要件がありますので、詳細は厚生労働省のリーフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/000927768.pdf)をご参照下さい。
  • パートナー任せにせず積極的に子育てをしたい男性社員が育休を取得し、私生活面で望む形で育児時間を確保できることで公私のバランスがとれ、その結果、ワークライフも充実し、会社に対する満足度やモチベーションのさらなる向上が期待できます。
  • 「男性の育休取得率の高い、育休取得に前向きで理解のある職場」との、企業イメージや企業価値のアップにつながる可能性もあります。それにより、新卒や中途採用時の優秀な人材確保に優位に働くことでしょう。

育児休業給付金の給付率は現状、育休開始から半年間は休む前の賃金の67%、その後は50%です。
育休中は前述の通り、社会保険料も免除されるため、取得から半年間は手取り収入が休業前の実質8割となります。

2023年6月に策定した「次元の異なる少子化対策」で政府は対策の一環として、実質8割となっている現在の給付率を実質10割となるように引き上げる案を示しました。
両親がともに14日以上取得した場合は、28日間を上限に給付率を80%程度に引き上げ、手取り収入を休業前と変わらないようにするとしています。

また、配偶者がいない場合や、フリーランスなどで雇用保険に加入しておらず片方の親しか育休を取得できない場合も、14日以上の取得をしていれば給付率を引き上げる方向で検討しています。
厚生労働省は、財源も含め、具体的な制度設計を進めたうえで2024年度の通常国会で関連法案を提出する方針で、2025年度からの開始を目指すとしていますので、今後も注目です。

その他にも、ぜひ活用いただきたい特例があります。

育児・介護休業法の改正の流れを受けて、育児休業の他にパパの育児休業取得をさらに促進するため、夫婦が協力して育児休業を取得できるように「産後パパ育休」制度が2022年10月より新設されました。

正式名称は『出生時育児休業』といい、その名の通り、子どもが生まれたときに取得する育児休業を示します。
従来の子どもが1歳になるまでに取得できる育休と組み合わせることも可能であり、後述するように「分割での取得が可能」なため、仕事の状況等で連続的に育休が取れない方でも取得がしやすくなるメリットがあります。

具体的な「産後パパ育休」の対象期間は、子どもの出生日から8週間以内の期間です。
この期間内に、最長4週間まで休業することができます。この4週間は、2回まで分割して取得することも可能となっておりますので、8週間の間に、ご家庭の事情に合わせて、延べ日数4週間をどこで取得するか自由に決めることができ、より柔軟な育休制度となっています。

「産後パパ育休」は、原則として取得する日の2週間前までに申し出る必要があります。
確実な出生日(=取得日)は事前には分からないケースがほとんどの為、「取得日」=「出産予定日」として申し出をするようにしておき、後日変更の申し出をしましょう。
また、2回に分割して取得したい場合にも、必ず「産後パパ育休」に入る前に事前に分割取得希望な旨を申し出ておく必要があります。後からやっぱり分割したいというのは認められていませんので注意が必要です。

もう一つの特徴として、通常の育休中では就業は不可とされていますが、「産後パパ育休」中においては、労使協定を締結している場合には、労働者が合意した範囲内で休業中に働くことも可能となっています。
ただし、就業可能日数については上限も設定されていますので、詳しくは「厚生労働省:育児・介護休業等に関する規則の規定例」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html)をご参照下さい。

ちなみに、前項でありました「両親がともに14日以上育休を取得した場合は、28日間を上限に給付率を80%程度に引き上げ、手取り収入を休業前と変わらないようにする」政府案の28日間が、この「産後パパ育休」がとれる最長4週間の休業の給付金に該当するといわれています。
このように、政府的にも給付金の増額を表明することで、男性の育休を後押しする「産後パパ育休」の積極的な取得に期待をしているといえるでしょう。

※「産後パパ育休」の創設と同時に、「育児休業」の内容も改正されています。
一度しか取得できなかった育休が2回に分けて取得可能になったこと、また、育休延長も改正され、育休延長開始日も選べるようになったので、より夫婦交代で育休を取得しやすくなりました。

「パパ・ママ育休プラス」は、通常子どもが1歳になるまでに取得する育休を、両親ともに取得して一定の要件を満たす場合に、子どもが1歳2ヵ月になるまで延長できる制度です。
一定の要件とは、以下です。

  • 配偶者が、子が1歳になるまでに育児休業を取得している
  • 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前
  • 本人の育児休業開始予定日が、配偶者の取得している育児休業の初日以降であること

1人あたりの育休取得可能最大日数はあくまで1年間です。育休取得期間の期日が延びるということで、取得日数が増えるわけではありませんので、そこはご注意下さい。
取得する際には、「パパ・ママ育休プラス」開始日の1ヵ月前までに申し出るようにしましょう。

パートナーが就労しているかどうかや、パートナーの育休取得タイミング、各ご家庭のマネープラン・ライフプランによって、最適なタイミングやご希望は三者三様かとは思いますが、ここでは、代表的なオススメの取得タイミングをご紹介します。

産後すぐのパートナーの体がしんどい時に、育児・家事をそばでサポートしてあげられるのはパートナーにとって、とても心強いことでしょう。
また、赤ちゃんはあれよあれよという間に大きくなり、顔の表情も日々変化していきます。
特に新生児期はあっという間、そんな貴重な急成長していく時期から寄り添えることは、今後子育てをしていく上での愛着形成に非常に良い機会となるでしょう。
産後すぐから育児休業給付金も出ますので、そういった意味でもオススメです。

パートナーが里帰り出産をした場合には、里帰りから自宅に戻ったタイミングで育休を取得するのもよいかと思います。
実家では実の母親などに献身的にサポートをしてもらえていたが、いざ実家を離れて自宅に戻った際に、「本当にこの先、夫がいない間、自分だけで育児・家事をこなせるだろうか」と、特に第一子の時には初めてづくしで、急に心細くなったりするものです。
自宅に戻ってからもしばらくは実の母親同様、パートナーが継続してサポートしてあげられたら安心かと思います。

例えば、産休・育休と取得していた母親が、子が1歳に達するまでに保育所が決まって復職する際に、父親がかわって「パパ・ママ育休プラス」を使って、子が1歳2ヵ月に達するまで育休を取得し、慣らし保育に対応するといった使い方もできます。
育休明け久しぶりに復職する時は、母親はリズムを掴み環境に慣れるまで、体力的にも精神的にも気が張り疲れることもあるでしょうから、そういった面でも、帰宅した際に家庭でパートナーが育児・家事をしてくれていたら心強いことでしょう。

この他にも、「兄弟児の夏休み等の長期休暇時に合わせて取得する」ですとか、「金銭的な面(社会保険料の免除)から考慮すると月をまたいで取得するのがよい」など、数ある選択肢の中から、何を重視して取得時期を決めるかを、パートナーと一緒に出産前から計画的に決めておくことを推奨いたします。

男性の育休取得促進に向けて様々な改革が進む中、2023年4月より常時雇用する労働省が1000人を超える企業は、育児休業等の取得状況を年に1回公表することが義務付けられました。
このように、今後も男女共に子育てと仕事を両立できる社会に向けた取組みは図られていくことでしょう。

そのような中において、制度がかたちばかりのものではなく、しっかりと活用され男性育休の取得率向上を実態として高めていくためには、本人の意向はもちろんのこと、企業や社会全体が、男性も育休制度を利用するのが当たり前であるという風土づくりに意識を向けることが大切です。

育児がしやすい社会環境を整備することで、家庭内のパートナーシップが深まるだけではなく、女性の働き方改善やジェンダー平等にも繋がります。

また、ワーク・ライフ・バランスを実現することは、企業にとっても人的な定着の促進、パフォーマンス及び企業価値の向上に期待できることでしょう。男性の積極的な育休取得が社会に浸透することで、男女問わず一人ひとりがその人らしく輝ける社会の創造が実現されることを願っています。


*こちらの記事は、ライターを務めております『withwork Magazine(X Talent株式会社)』でも、より詳しく解説しております。
よろしければ、そちらもご参照下さい。

【法改正】男性育休が義務化!メリットと給付金、おすすめ取得タイミング - withwork Magazine

2022年4月の育児・介護休業法により、これまで以上に注目されている男性育休。周囲でも育休取得者が増えてきた、

Kimoti 〜Quality of Life Counseling〜
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